セミナーレポート

最終更新日:2025.01.13

【登壇レポート】未経験から始めるITエンジニアへのキャリアチェンジ 「成功の秘訣」

スピーカー:株式会社マルニ 若林一平、司会:株式会社キュービック 平山直子 氏

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株式会社キュービック様主催のオンライン・オフラインセミナー『ITエンジニアへのキャリアチェンジ 成功の秘訣』に弊社若林と丸本が登壇してきました。当日は、金融系エンジニア経験のある若林がITエンジニアの転職市場の現状や企業の期待値、効果的なキャリアチェンジの方法などをお話しました。その模様をお届けします。

ITエンジニアとは?IT業界とはどんな構造になっているのか

株式会社マルニについて

平山氏:第1部『キャリアチェンジにこそ戦略的なキャリアデザインが必要な理由』について、株式会社マルニ共同代表の若林一平さんにお話しいただきます。若林さん、よろしくお願いします。

若林:株式会社マルニの若林です。我々の会社について少しお話しさせてください。、株式会社マルニは 人材紹介事業を核にHR領域を横断的にやっていこうと考えて立ち上げた会社です。我々の特徴はキャリアアドバイザーが人材紹介会社(転職エージェント)出身ではなく、エンジニアやマーケティング、その他さまざまな専門職をしていた現場の人間だということです。わたし自身も元々エンジニア、セールス、新規事業開発、ITコンサルなどをそれぞれ3〜5年経験しており、各分野における妥当性のあるキャリアアドバイスを得意としています。

ITエンジニアとは

平山氏:現場経験を活かしたアドバイスができるのですね。では、本題に入る前に、ITエンジニアについて説明していただけますか?

若林:はい。まずは転職市場におけるITエンジニアを取り巻く環境について話しさせてください。そもそもITエンジニアとは何か。現役の諸先輩方の前で恐縮ですが、かなり単純化します。ここでは、ITエンジニアは情報技術に関する専門性の高い技能を持ち、様々なシステムやツールの設計、開発、運用を行う職業とさせてください。

IT技術とエンジニアの変遷

若林:IT技術の適応範囲は、パーソナルコンピューターから始まり、インターネット、テレコニュニケーション、メディア、Eコマース、フィーチャーフォン、スマートフォン、現在ではIoT、AI、SaaSにまで広がっています。当然、利用場所が広がれば広がるほど、それを駆使するITエンジニアの需要も拡大しており、企業の採用意向も高まっています。最近のChatGPTやClaudeといった生成系AI(ジェネレーティブAI)の勢いをみているとこの流れは更に強くなっていく気がします。

IT企業で未経験からエンジニアになれる可能性が高い事業形態は

若林:IT業界にはさまざまな事業カテゴリが存在します。SI(System Integration)、SES(Software Engineering Services)、パッケージ・プラットフォーム、Webサービス、ハードウェアなどここに挙げたものはほんの一例にすぎません。その中でも、未経験エンジニアを受け入れてくれる可能性が高いのは主にSIやSESの領域でしょうね。

SIerとは、クライアント企業に対して情報技術を活用したシステムの開発、導入、保守を行う企業の総称です。SESは、それらの企業にエンジニアの人材を提供する企業群です。

SIer/SES業界の構造は階層化されています。一次受け、二次受け、三次受け、四次受けとそれぞれの層で役割が異なり、一次受けはITコンサルタントなどと連携し、要件定義や基本設計を行い、二次受け以降が詳細設計、実装、テストを行います。未経験の中途採用は主に三次受け、四次受けの企業で行われていることが多いです。

未経験の定義は企業によって異なる

平山氏:未経験というのはどこからが未経験なんですか?

若林:よい質問ありがとうございます。これはITエンジニアだけでなく、あるゆる職種の転職活動において重要な考え方ですね。未経験の定義は企業によって違います。例えば、ビジネス経験なし=完全未経験でも受け入れてくれる企業、営業やマーケティング、UI/UXデザインといったビジネスに関わる他領域での経験を求める企業、多領域の経験に加えてエンジニア領域の自己学習や実践経験を求める企業などがあります。

企業によって未経験の考え方が異なるため、応募の際は注意が必要です。

採用側企業から見た、未経験エンジニア

平山氏:ここまでは転職エージェント/キャリアアドバイザー側の視点で若林さんにお話いただきましたが、採用企業側の視点も交えて、色々とお話を伺っていきたいと思います。零株式会社代表取締役の坂井さん、ご登壇いただけますでしょうか。

坂井氏:零株式会社の坂井です。大学時代からプログラミングを開始し、Ruby on RailsやReactを4、5年経験した後にデジタルマーケティングのスキルを身につけ、人材事業および広告事業の会社を経営しています。

弊社は2期目で正社員4名ほどの会社です。最近、エンジニア志望の完全未経験の人材を採用し、育成しているので、今回のセミナーで有益なお話ができるのではないかと思って参加しました。

未経験エンジニア採用と育成の実態

平山氏:ありがとうございます。まずは、未経験者採用について、御社がどのような取り組みをしているか、教えていただけますか?

坂井氏:文字通り、エンジニアをやったことがない、27歳未経験の方にプログラミングを学んでもらっています。まぁ、一筋縄ではいきませんよね…。自分自身も技術的には難しくない掲示板やSNSをつくるのに1、2年かかってしまった記憶がありますし。

平山氏:未経験者の育成について、どのような取り組みをされていますか?

坂井氏:まずはRailsチュートリアル(Ruby on Rails)を学んでもらっています。学習でつまずいたら質問してもらい、一緒に解決していってもらう感じです。 もちろん、すべての時間をトレーニングに割いてもらうのは難しいので、1日4時間ぐらいプログラミングを学ぶ時間を作り、残りの4時間はマーケティングなど他の仕事を手伝ってもらうようにしています。育成期間は3ヶ月から半年ぐらいを考えています。

若林:坂井さんのところはマンツーマンで教えてもらえるのがいいですね。なお、広義の未経験エンジニアを育成しようとする企業は増えているとは思います。特にSaaS(Software as a Service)などプロダクトを持っている企業はエンジニアがたくさん必要ですからね。教育体制は整っているところも多いでしょう。ただし、バラツキはあるかもしれません。

制度が整っている会社でも、自己学習を続けることが大切です。どの職種でも同じことが言えてしまうかもしれませんが、エンジニアの場合は技術サイクルが特に早いので。

未経験ITエンジニアキャリアチェンジの進め方

平山氏:ここからは第3部です。『未経験ITエンジニアキャリアチェンジの進め方』というテーマでお話しします。丸本さん、ご登壇いただけますか。

丸本:株式会社マルニの丸本と申します。私は博報堂アイ・スタジオや東急エージェンシーなどの広告代理店で、主にデジタル領域の企画やプランニングを担当し、特に採用ブランディングや採用広報といったテーマで多くの仕事をしてきました。求職者様と関わる機会が多かったため、株式会社マルニを創業し、求職者様を応援する立場で若林さんと仕事をしています。本日はよろしくお願いいたします。

平山:ありがとうございます。では、ここからは丸本さんと若林さんで自由にお話しいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

エンジニアこそ戦略的なキャリアプランが必要

丸本:エンジニアにかかわらず、転職では戦略的なキャリア開発や企業選びが欠かせません。とはいえ、これまでの話を聞いて、エンジニアの方は特にそこをしっかり考えないといけないと感じました。若林さん、どうでしょうか?

若林:そうですね。「エンジニア=手に職」だと考えて、エンジニアをめざす方も多いと聞いています。この考え方は少し危険なのではないかと。エンジニアは絶えず自己研鑽を積んでいかなければならない職種です。まずはどんなエンジニアになりたいか、キャリアプランを定めることが重要になってきます。

そのためにはリサーチが大切です。普段触れているウェブサービスなどを参考に、「このプロダクトはどんな言語で動いているのか、どうすれば作れるのか」など、具体的に考えてみるべきでしょう。

丸本:キャリアプランを描いたとして、それを実現できる企業選びはどうすべきでしょうか?エンジニアの場合は専門性が高すぎませんか?試行錯誤したことの妥当さをどう検証すればいいですか?

若林:自身がどういうエンジニアになりたいかを考えた上で、面接時に具体的な案件や学習機会について質問することが重要です。

大手企業でもキャリアアップにならない場合がある

若林:ちなみにSES企業の怖いところは、皆が知っている大手企業でもキャリアの積み上げにくい作業要員にされる可能性があるところです。

最近耳にした具体例を挙げると、介護福祉業界から収入アップを目指してエンジニアに転職した方が、5年間仕様書の修正しかさせてもらえなかったケースがありました。 こういった場合、エンジニアとしてのキャリアアップが難しくなってしまいます。また、キャリアを転換しようにも職務経歴書にかけることが少なくなってしまうんです。もちろん、仕様書修正を担当することがキャリアにつながらないと否定しているわけではありません。エンジニアとして業務の全体感を持つために必要なプロセスのひとつではあると思いますよ。

第三者の重要性

丸本:そのようなことを避けるには、どうしたら良いでしょうか?

若林:自分のゴールイメージを踏まえ、積み上げたいキャリアが本当に叶うのか、企業に積極的に質問し、必要なスキルセットや経験を選んでいくことが重要です。 ただ、自身で全て解決することは難しいので、第三者に見てもらうことも重要なポイントです。

丸本:なりたいエンジニア像を決め、必要な技術を探し、取得するための努力を考え、環境づくりも。これらを1人で考えきるのは難しいと思います。そういう時、若林さんはどうすべきだと思いますか?

若林:私たちがその立場なので言いづらいのですが、転職エージェントやキャリアコンサルタント、キャリアアドバイザーと話してみてください。

また、エージェントだけでなく、知り合いのエンジニアや、プログラミンの実務経験がある方、エンジニアとよく仕事をしている方など、その業界や業種をよく知っている方の話は参考になるはずです。

転職エージェントにはこの質問をしてみよう

若林:良いエージェントを見極めるコツ。これは皆さん知りたいですよね。私がずっとお話していることがありまして。「なぜ私にこの企業やポジションを提案したんですか」と提案意図をきちんと聞くことです。ある求職者の経験談ですが、現在勤務している会社と同じポジションをエージェントから提案されたことがありました。理由を聞いたところ、「AIが選んだのでわからない」と言われたそうです。

ちなみにこの提案意図を聞いて判断するためには、自身としてやりたいことを決めておく必要がありますよね。今日何度かお話に挙がっているキャリアプランがあるからこそ、提案の良し悪しがわかるわけで。このように、提案意図がなく案件リストをだす会社もあります。自身で指針を決め、エージェントをうまく利用することをおすすめします。

キャリアチェンジも「一発逆転」ではなく「積み重ね」

丸本:最後に、キャリアの積み重ねについてお聞かせください。

若林:キャリアは常に積み重ねていくのが重要です。とはいえ、すぐにそれらが計算どおりにつながっていくとも限りません。これまででお伝えしたことと少し食い違ってくるところもあるのですが、スキルや経験はインストールしてから身体に馴染むまで時間がかかるものだと考えていただけるとよいかもしれません。

例えば、私の場合、エンジニア経験がエンジニアを辞めたあとの新規事業開発の仕事でも役に立ちました。広告メディアの会社で新しいデータプロダクトをつくるプロジェクトを担当していたとき、プログラミングを理解しているのはチームに私しかいなかったので、イニシアチブを持って進行することができました。このように、キャリアは直線的に進むものではなく、過去の経験が未来のどこかで急に意味づけされたりもします。すべて考えたとおりにはならないかもしれませんが、仮説を立てておくことですね。

坂井氏:私もプログラマーからマーケティングの仕事に移りました。若林さんの話と少し似ていて、マーケティングはデジタルテクノロジーをどんどん取り入れるようになっていたので、プログラミングの知識があると仕事がはかどるんですよね。また、プログラミングを学んだことで、より論理的な考え方ができるようになりました。

若林氏:エンジニアから少しズレてしまったのですが大切な視点だと思います。お伝えしたいのは、エンジニアへのキャリアチェンジを目的にするのではなく、どういうエンジニアになりたいかという仮のゴールを見据えて経験を積んでほしいということです。その過程でうまくいくときもいかないときもあるでしょう。一人で考えてると一喜一憂してしまいがちですが、そこは私たちに声をかけてください。きっとお力になれるはずです。

質疑応答

平山氏:ありがとうございます。若林さん、丸本さん、ありがとうございました。ここで質疑応答を受け付けます。

プログラミングをさせてもらえない会社に入ってしまったとき

『坂井さんの話にもありましたが、プログラミングさせてもらえる会社を選ぶ必要があると思います。自分では見抜けない、鋭い質問ができない場合、エージェントさんから聞いてもらえますか。また、プログラミングをさせてもらえると言われたのに、実際には検証やテストばかりだったとき、エージェントさんはどう対応しますか。』

若林:これは担当エージェント次第かもしれません。私は確認します。特に先ほどお話した仕様書修正の方の話などもあるので、求職者さんの機会損失にならないように早めに動きます。ただ、エンジニアは専門性の高い分野なので、万が一、担当した転職エージェントの知識が十分でない場合、ご自身で質問をしなくてはいけない可能性もあるでしょうね。質問内容としては、自分がその会社でやりたいことが可能かどうかを直接聞くのが重要だと思います。

丸本:そうですね。それを聞いた時のは反応で企業のスタンスがわかる部分もありそうですね。ぜひ聞いてみることをおすすめします。

仕事以外でプログラミングを学ぶには

平山:ありがとうございます。次の質問は坂井さんにお願いします。

『仕事以外でプログラミングを学ぶ際、具体的にどんなことをするのがおすすめですか。本を読む、スクールに通う以外であると嬉しいです。』

坂井氏:おすすめしているのは、作りたいものを決めて、それを作ってみることです。簡単なアプリでもいいのでX(Twitter)のようなものを作ってみるとかいかがでしょうか。私の場合、Slackなどで動く簡単なボットをNode.jsで作りました。

「出勤」と打つと、その言葉を読み取ってスプレッドシートに記録するようなものです。何か作ってみようと発想して、簡単なものから作ってみると、プログラミングの考え方や作り方がわかりやすく理解できると思います。

平山:なるほど。まずはやってみるということですね。ありがとうございます。時間が経ってしまったので、質疑応答はここまでとさせていただきます。若林さん、丸本さん、坂井さん、ありがとうございました。

INTERVIEWER

若林 一平

代表コンサルタント

金融系のシステムエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、営業にキャリアチェンジ。テクノロジーへの知見と営業力を武器にウェブ制作会社を創業するも廃業。その後、ぴあにてデジタル領域の新規事業立ち上げ、セールスフォース・ジャパンにてITコンサルティングなどを経験したのち、人材紹介会社にて転職支援のコンサルタントとして活躍。多様な職務経歴/人生経験から生み出された独自のキャリア論で多くの求職者から支持を集める。2022年株式会社マルニに参画し、転職支援事業の責任者に就任。

金融系のシステムエンジニアとしてキャリアをスタート。その後、営業にキャリアチェンジ。テクノロジーへの知見と営業力を武器にウェブ制作会社を創業するも廃業。その後、ぴあにてデジタル領域の新規事業立ち上げ、セールスフォース・ジャパンにてITコンサルティングなどを経験したのち、人材紹介会社にて転職支援のコンサルタントとして活躍。多様な職務経歴/人生経験から生み出された独自のキャリア論で多くの求職者から支持を集める。2022年株式会社マルニに参画し、転職支援事業の責任者に就任。

INTERVIEWER

丸本 翔一

コンサルタント

大学を4回留年後、複数社を経て、博報堂アイ・スタジオでインタラクティブプラナー/コピーライター、東急エージェンシーで統合コミュニケーションプランナーとして、国内外大手企業/自治体の多様なマーケティング・コミュニケーションPJに数多く携わり、特にデジタル/ソーシャルメディアを活用した企画立案において多くの実績を残した。その後、株式会社マルニを創業。

大学を4回留年後、複数社を経て、博報堂アイ・スタジオでインタラクティブプラナー/コピーライター、東急エージェンシーで統合コミュニケーションプランナーとして、国内外大手企業/自治体の多様なマーケティング・コミュニケーションPJに数多く携わり、特にデジタル/ソーシャルメディアを活用した企画立案において多くの実績を残した。その後、株式会社マルニを創業。

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株式会社マルニでは広告/マーケティング/IT業界などで業務経験のあるコンサルタントが実体験をベースとしたキャリアのアドバイスとキャリアプランに沿った企業紹介を行っています。

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